1. 気がついたら、異世界。

「ありえない、ありえない、ありえない」
 私は、セインガルド王国の首都ダリルシェイドの入り口で、ひと目も気にせず呟いていた。
「だって、私は海底洞窟で海に飲み込まれて……。十八年後に行ってフォルトゥナを倒して、無に帰ったはず」
 だけれど、なぜか私は、ここに存在した。神の目の騒乱が起きる前に。あの時と同じように、いつの間にかダリルシェイドの入り口にいた。
 私は、神の目の騒乱の時にも、フォルトゥナを倒しに行った時も『彼』とは特別な関係ではなかった。さすがに、フォルトゥナを倒した時には、神の目の騒乱の時よりも『彼』とは仲良くなった。『彼』とは、性別を越えた友情を育んでいて、そして『彼』はずっとマリアンさんを愛していた。
 そんな一途な『彼』に私が入り込む隙間なんて、あるだろうか。
 はっきり言って、私も『彼』は恋愛対象ではない。あの我儘なお子様ぶりには、手が焼ける。異性としては見れない。
 なのに、何故か世界は……私と『彼』が相思相愛にならない限り、この時間のループから脱出させてくれないようだ。
 だって、私の記憶には何度も神の目の騒乱と十八年後のフォルトゥナの事件を繰り返したことが、残っているから。
 なんなの、アタモニ様なの?私と『彼』を世界を超えて、くっつけさせようとするのは……!
 私は、運命を神様に決められるのは、大嫌いだと、フォルトゥナに叫んだはずなのに、すっごい無力じゃないかっ。
「ちくしょーっ今に見てろよ!!」
 ひと目も憚らず、決意を新たに叫んだ。
 絶対に、『彼』を落とさないで、このループから抜けだしてみせる。

時間ループに負けるかっ

[2012年 07月 02日]