3. リオン
リオンは、一言で言うと天邪鬼な美少年というところだろうか。
私が、慌てて屋敷に帰ると不機嫌そうな表情で私を睨みつける。
「マリアンなら、そんな品のない歩き方はしない」
鼻を鳴らして、リオンは自分の部屋へと戻っていった。
こ、い、つーっ。
雇い主の息子じゃなかったら、拳銃の的にしてやるのに。
「あら、おかえりなさい」
メイド長のマリアンが、私を見つけていった。歳も大して変わらないのに、あの我儘リオンに優しい態度を貫き通すのは、正直、頭がさがる思いだ。その優しさが、「母親の居ない、父親からも愛されていないかわいそうな子供」という思いから来たとしてもだ。
同情から愛情が生まれることはない。けれど、同情でも人を救うことはできる。
「ただいま、マリアン。相変わらず、あの坊ちゃんの口の悪さをどうにかしてやりたいと思ってるよ」
私の返答に、マリアンは困ったように笑って言った。
「リオン様が、貴女をお呼びよ。大事な話とおっしゃっていたわ」
なんだ、その死刑宣告は。
マリアンてば、女神のような笑顔を浮かべながら、地獄に叩き落すようなことを平気でおっしゃるんですね!!
お茶の用意をして行くといいわ、とマリアンは言いながら奥の厨房へ消えていった。そうだ、今頃は夕食に使うリネン類の準備をしなくてはならない。
私は、戦々恐々としながらお茶の道具を持ってリオンの部屋へと向かった。
あの、天邪鬼坊ちゃんめーっ
[2012年 07月 23日]